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中国プロ野球、今度こそ「商売」になるのか

6球団・54試合で見えた可能性と、都市リーグが抱える課題

夕暮れの架空の野球場。手前にボールと無地のチケット、奥に観客席と売店が見える
AI生成のイメージ画像。実際のCPBの試合・球場・観客を撮影したものではありません。

中国で、プロ野球が新たな一歩を踏み出した。

今年1月に始まった中国棒球城市聯賽(中国都市野球リーグ、CPB)である。

鹿屋体育大学の石原豊一准教授は、6月に発表したレポートで、このリーグを「スポーツ+観光+都市開発」を組み合わせた新たな産業モデルとして分析している。

野球の試合を開催するだけではない。球場に人を集め、飲食やグッズを売り、街の消費を活性化させる。

これまで中国では、プロ野球の立ち上げが何度も試みられてきたが、いずれも定着しなかった。

今度は少し事情が違うようだ。

54試合を終えた新リーグの現在地

CPBは1月の「立春リーグ」に4球団が参加。8~9月の「夏至リーグ」では6球団に拡大し、上海と深圳で計54試合を行った。

参加したのは北京正大龍、上海虎鯨、深圳藍襪、厦門海豚、福州海俠、長沙旺旺の6チームだ。

9月28日の決勝では、上海虎鯨が北京正大龍を1対0で破り、3戦制のシリーズを2勝1敗で制した。

上海は開幕から4連敗を喫しながら、その後巻き返して優勝した。決勝シリーズも初戦は上海が11対1、翌日は北京が14対0で勝利。最終戦は一転して投手戦となった。

なかなか劇的な展開である。

興味深いのは、試合以外の変化だ。

上海では黄浦江沿いに「西岸棒球公園」が整備され、約1300人を収容する球場で試合が行われた。

周辺には飲食店やグッズ売り場が並び、チアリーダーや観客参加型のイベントも開催された。野球を知らない人でも、球場で半日を楽しめるようにしようというわけだ。

主催者側が公表した夏至リーグのチケットデータでは、上海会場の観客の20.9%が18歳未満。35~44歳も34.3%を占めた。深圳では女性客の割合が51.6%に達したという。

野球好きの男性ばかりが集まる球場とは、少し違う風景が生まれている。

10月1日の新華社の報道によれば、夏至リーグの関連商品売上高は100万元を超え、飲食ブースの売上高も約90万元に達した。

チケット代を除いた一人当たりの場内消費額は、約200元だったという。

小規模なリーグとしては興味深い数字だ。

もっとも、これらは売上高であって利益ではない。観客数や販売実績から、リーグ全体の採算が取れていると判断することもできない。

ただ、野球の試合そのものを商品にし、関連する消費を生み出す仕組みが動き始めたことは確かだろう。

外国人選手が過半数を占めるリーグ

もう一つ、今のCPBを特徴づけているのが、選手の国際化である。

夏至リーグの登録選手は229人。その内訳は中国本土出身者101人、香港・マカオ・台湾の選手52人、その他の外国人選手76人だった。

中国本土の選手は44.1%にとどまる。

キューバやベネズエラ、日本、韓国など、さまざまな国・地域から選手が参加している。

中でも中南米の選手の存在感は大きい。

今回のリーグでは最速153キロの球速を記録した投手もいた。10月14日付の中国体育報は、中国国内の有力投手が140キロ前後であるのに対し、外国人投手は150キロ前後の球を投げると伝えている。

中国人選手にとっては、普段なかなか経験できない相手と対戦する機会になっている。

実際、長沙旺旺の21歳の投手、呂博遠は、外国人選手との対戦に当初は大きな重圧を感じたものの、試合を重ねるうちに手応えをつかんだという。最終的には24奪三振でリーグ3位に入り、上位6人の中で唯一の中国本土選手となった。

外国人選手の加入が、国内選手の競技力向上につながる可能性を示す例だろう。

ただ、私は少々気になる。

中国人選手が半数に満たないリーグで、中国野球の将来を支える人材をどこまで育てられるのか。

外国人選手を集めれば、試合の水準は上がる。

しかし、そのことと、中国人選手が長く競技を続けられる環境が整うことは、同じではない。

リーグの規模を広げ、試合数を増やし、野球を仕事として続けられる選手を増やす。

そこまで実現して、初めて国内の競技力向上にもつながるのではないだろうか。

台湾が持ち込んだ興行の仕組み

CPBの運営を担うのは、上海酷棒体育商務有限公司である。

台湾で野球大会の運営などに携わってきた胡瓏智氏が率いる企業だ。

台湾には長年のプロ野球文化があり、球場での応援、チアリーダー、グッズ販売、ファンとの交流など、興行のノウハウが蓄積されている。

中国は、その経験を取り込もうとしている。

しかし、運営体制はまだ完成していない。

10月30日付の台湾『経済日報』が、CPB関係者への取材で興味深い事実を伝えている。

現在、各球団が独自に販売するセット券などを除き、チケット販売は主にリーグ側が担い、入場料収入もリーグが受け取っているという。

その収入は主としてリーグのマーケティングに再投資されている。

つまり、現状では、地元の球団が自分たちの本拠地で試合を開催し、その収入によって経営を支える仕組みにはなっていない。

CPB側も、将来的にはホームゲームの収入を各球団に帰属させる方向を検討しているという。

ここは、非常に重要なところだと思う。

球団を経営する企業にとって、自分たちの努力がどれだけ収益につながるのかは大きな問題である。

地元のファンを増やし、チケットやグッズを売っても、その成果が球団経営に十分反映されなければ、長期的な投資は難しい。

単に客を集めるだけではなく、客を集めた球団が、きちんと商売を続けられる仕組みが必要なのである。

「都市リーグ」は、まだ都市に根付いていない

CPBは2028年から、各球団が本拠地を持つホーム・アンド・アウェー制への移行を計画している。

しかし、現状は上海と深圳での集中開催方式だ。

北京や厦門、福州などの球団は、その都市の名前を冠していても、まだ地元で継続的に試合を開催しているわけではない。

球場整備も課題である。

上海の西岸棒球公園は、当初2年間の暫定施設として計画された。

一方、長沙では5000席規模の新球場が計画され、2027年末の完成を目指している。

各都市に本拠地ができれば、地元で試合を見る機会は増えるだろう。

ただ、都市の名前を付ければ、それだけで地域に愛される球団になるわけではない。

試合を開催する回数、球団の経営基盤、地元企業の支援、ファンとの関係。

そうしたものを、これからつくらなければならない。

中国政府も、プロスポーツの産業化に力を入れ始めている。

9月30日に公表された国務院弁公庁の政策文書「スポーツ大会の発展と消費活力の喚起に関する意見」では、サッカーやバスケットボールなどと並んで、野球のプロリーグを発展させる方針が明記された。

国家が競技力向上だけでなく、スポーツを消費や地域経済につなげることを重視しているのである。

CPBは、その政策の方向とも合致している。

もっとも、国が後押しするからといって、プロリーグが必ず成功するわけではない。

むしろ、ここから先は行政の支援だけでは解決できない問題が多い。

球団が稼ぎ、選手に報酬を払い、ファンが翌年も試合を見に来る。

その循環が生まれるかどうかだ。

2008年にも、同じ心配をしていた

私は2007年、中国野球リーグ(CBL)の開幕記者会見を取材した。

当時のリーグを支えていたのは、ソフトバンクが出資する中国棒球企画などの日本企業だった。

スポンサーや球団間の技術交流にも、日本のプロ野球界が深く関わっていた。

私は、その協力に期待する一方、中国自身のリーグとして独り立ちできるのかと疑問を抱いた。

翌2008年には、さらに象徴的な出来事があった。

北京五輪のために造られた球場が、国内リーグでは使えなくなり、国家代表選手も五輪への準備を優先してリーグ前半戦に出場しなかったのである。

五輪のために始まったリーグなのに、五輪によって国内リーグの興行が後回しになっていた。

当時、私は「どうも盛り上がらないぞ?!中国野球リーグ」という記事で、この矛盾を指摘した。

あれから18年。

かつては日本企業に支えられたリーグが、今度は台湾の興行ノウハウを取り込み、商業化に挑んでいる。

中国本土の企業も球団運営に参加し、観客の消費を分析するようになった。

確かに、以前とは違う。

ただ、一つだけ変わらない問題がある。

外部の資金や技術を取り入れたあと、中国自身が持続できるリーグをつくれるか、ということだ。

黒字化より先に、確認したいこと

2026年のCPBは、6球団・54試合を開催した。

商品や飲食の売上も生まれた。

外国人選手の参加によって試合の水準も上がり、球場へ足を運ぶ観客にも新しい広がりが見えている。

以前の中国プロ野球と比べれば、前進した部分は少なくない。

しかし、今のところ、リーグ全体の黒字化や各球団の経営状況、観客の継続的な来場率を判断できる十分な数字は公表されていない。

2028年の本格的な主催試合制度も、まだ計画段階である。

私は、今回の挑戦を評価するのであれば、こうした点を慎重に見ていく必要があると思う。

試合を開催することはできた。

客を集めることも、ある程度できた。

では、球団はその収入で経営を続けられるのか。

2028年、各都市でホームゲームが始まったとき、私はその点に注目したい。

開幕戦に何人集まったかではない。

観客が繰り返し球場を訪れ、地元の球団がその収入によって選手を支え、翌年もリーグが続いていく。

そんな当たり前のプロ野球が、中国でも成立するのか。

2008年の北京で、私は五輪を目前にした中国野球の不安定さを取材した。

今度こそ、その先を見てみたいのである。

<了>


参考資料

筆者の過去記事

※2026年11月5日時点で確認できた公開資料に基づく。観客構成・消費・登録選手に関する数値は主催者発表または報道に基づき、売上高と利益、計画と実績を区別した。2007~2008年の記述は筆者自身の過去記事に基づく。

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