中国人アスリートにもあった!オンラインカジノとの危険な関係

スポーツ事情

はじめに―日本の芸能界とスポーツ界のオンラインカジノ問題から見る国際的な影響

日本では今、芸能人だけでなくプロスポーツ選手によるオンラインカジノへの関与が明るみとなり、大きな社会問題となっている。特に2020年以降、プロ野球選手の闇カジノ事件や、大手Jリーガーのスポーツ賭博問題が発覚し、世論の厳しい視線が注がれてきた。しかし、この問題は決して日本特有のものではない。中国でも同様に、著名なアスリートが違法賭博や借金トラブルに巻き込まれるケースが相次いでいる。

本レポートでは、中国の有名アスリートが違法賭博やオンラインカジノに関与した実態を、過去の事例や社会的背景を踏まえて詳細に考察する。さらに、日本のスポーツ界との共通点や相違点を分析しながら、今後の展望についても述べる。


1. 違法賭博に手を染めるアスリートたち

(1) 中国サッカー界を揺るがす八百長スキャンダル

中国のスポーツ界において、違法賭博と最も深く関わってきた競技はサッカーである。

2009年から2011年にかけて、中国公安部がサッカー界における大規模な八百長および違法賭博の捜査を実施。これにより、元中国代表の沈思(シェン・スー)や祁宏(チー・ホン)らが試合の勝敗を不正に操作していたことが発覚した。彼らは最大6年の懲役刑を受け、永久追放処分となった。中国サッカー協会の高官までもが収賄罪で逮捕されるなど、国内サッカー界の汚職問題が一気に露呈した。

しかし、その後も違法賭博は根絶されず、2023年には新たに43名の選手・コーチが永久追放処分を受けるという事態に発展。処分者には、中国代表経験のある選手も含まれ、業界全体の信頼が再び揺らぐこととなった。

(2) 卓球界のスーパースターも賭博に溺れる

中国の国技とも称される卓球界でも、違法賭博に関与する選手が現れた。特に大きな波紋を呼んだのが、ロンドン五輪金メダリスト・張継科(チャン・ジーカー)のケースである。

2023年、張継科が違法なオンラインカジノで数千万円もの借金を抱え、返済のために交際していた有名女優のプライベート映像を担保にしたというスキャンダルが発覚。彼のスポンサー企業は次々と契約を解除し、一気に「英雄」から「社会的信用を失った人物」へと転落した。

また、2004年のアテネ五輪で金メダルを獲得した孔令輝(コン・リンホイ)も、シンガポールのカジノでの巨額の負債問題が発覚し、代表チームのコーチ職を解任されている。

(3) スヌーカーの大規模八百長事件

2023年には、中国のスヌーカー界で前代未聞の八百長スキャンダルが明るみに出た。世界ランキング上位に名を連ねる梁文博(リアン・ウェンボー)と李行(リー・ハン)ら10名の中国人選手が、違法賭博組織と結託し試合を意図的に操作。

調査の結果、彼らには生涯出場禁止や数年間の出場停止処分が下され、スヌーカー界における中国の地位が大きく揺らぐ事態となった。


2. なぜアスリートは違法賭博に手を出すのか?

(1) 高額報酬とプレッシャーの狭間

トップアスリートは巨額の報酬を手にする一方で、競技人生は短く、厳しい競争環境にさらされる。

中国では、サッカーや卓球のスター選手が年間数億円以上の収入を得ることが珍しくない。しかし、それに伴う精神的プレッシャー、収入の急激な増加による金銭感覚の変化、浪費癖などが、違法賭博への傾倒を助長していると指摘されている。例えば、張継科のようなトップ選手でさえ、巨額の借金を抱えた背景にはギャンブル依存があったとされる。多くの選手が、一度はまると抜け出せない負のスパイラルに陥っている。

(2) オンラインカジノの普及

近年、中国ではVPNを利用した違法オンラインカジノへのアクセスが急増しており、スマートフォンひとつで手軽にギャンブルに参加できる環境が整っている。アスリートも例外ではなく、試合の合間や移動時間に賭博をするケースが増えている。


3. 中国政府とスポーツ界の対応

(1) 厳罰化と監視強化

中国当局は、スポーツ界における違法賭博や八百長の問題を深刻に捉え、以下のような措置を講じている。

  • 八百長関与者の永久追放
  • オンラインカジノサイトの遮断・摘発
  • スポーツ選手向けの倫理教育の徹底

2020年には「海外のカジノリゾートへの渡航制限」を導入し、特定の国や地域での中国人選手の賭博行為を抑制する措置を取った。また、VPNを利用したオンライン賭博へのアクセス遮断を強化し、違法サイトの摘発や金融機関との協力による送金規制を進めるなど、より厳格な取り締まりを実施している。

(2) 再発防止への取り組み

一部のスポーツ協会では、心理カウンセリングや金銭管理の指導プログラムを導入し、アスリートが違法賭博に手を出さないような環境づくりを推進している。


4. まとめと今後の展望

中国におけるアスリートの違法賭博問題は根深く、サッカー、卓球、スヌーカーと競技を問わず発生している。

スポーツの公正性を維持するためには、厳しい処分とともに、アスリートの教育やメンタルケアが不可欠である。

日本でも同様の問題が発生していることから、今後は国際的な協力のもとで、スポーツ界の信頼回復に向けた対策を強化する必要がある。

【参考資料】

AS USA/AFP: “Japan ace Momota banned for Rio over illegal gambling”(日本・桃田賢斗の違法賭博処分)​en.as.com

Wikipedia: “Gambling in China”(中国の賭博に関する法規制)​en.wikipedia.org

Global Times / Reuters: 「中国の八百長スキャンダル」​globaltimes.cn

VOA(米国之音): 「中国サッカー界43名への永久追放処分」​voachinese.comvoachinese.com

AS USA: “China suspends table tennis coach over gambling debt”(卓球・孔令輝コーチのギャンブル負債事件)​en.as.comen.as.com

SHINE News: “Former world champion allegedly caught in debt trap”(卓球・張継科の借金スキャンダル)​shine.cnshine.cn

新浪财经: 「スポーツ選手のスキャンダル特集」(張継科・孔令輝・桃田賢斗の事例)​finance.sina.com.cnfinance.sina.com.cnfinance.sina.com.cn

澎湃新聞:The Paper: 「元トランポリン世界王者・楊松の賭博事件」​m.thepaper.cnm.thepaper.cn

Wikipedia: “Yang Song”(楊松の経歴と有罪判決)​en.wikipedia.org

Sixth Tone: “10 Chinese Snooker Players Banned For Match-Fixing”(中国人スヌーカー選手の八百長処分)​sixthtone.comsixthtone.com

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