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HISTORICAL ARCHIVE / 2008-09

回憶 北京五輪(8)井村シンクロ中国に感じたもの

過去掲載記事をアーカイブから復元したものです。本文は当時の表記を維持しています。
出典・公開日時・復元状況
原掲載先
スポーツナビ+/スポーツCHINA〜体育中国
筆者(原ページ署名)
asa8043
当時の公開日時
2008/09/01 06:32 GMT+9
公開日時の根拠
dc:dateとページ内日付・投稿時刻を照合一致
復元元URL
http://www.plus-blog.sportsnavi.com:80/asa8043/article/503
保存日時(UTC)
2008-09-17T20:30:22Z
Internet Archive
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当時の公開日時:2008/09/01 06:32 GMT+9 / 筆者:朝倉浩之

以前、シンクロナイズドスイミングの中国代表ヘッドコーチ、井村雅代さんと北京市内の景山公園にご一緒したことがある。五輪まで、まだまだ時間があるころだったので、「最後のほっと一息」だったのだろう。非常にリラックスした表情で観光をしてらっしゃった。 景山公園は、あの「ラストエンペラー」の紫禁城を上から見下ろすことができる。井村さんは、北京ならではの、きっちりと左右に対称に立ち並んでいる建物群を見て、その「センターライン上」に立ちながら、「私は真ん中が好き。ぴしっと揃っていないと腹が立つのよ」と笑っておられた。そのとき、私は「この方は根っからのシンクロ人間だなあ」と思った。 今回の北京五輪で印象に残ったスポーツシーンはいくつかあるが、シンクロは確実にその一つだ。ただ、あの中国が銅メダルを取ったチームのフリールーチンは、別会場にちょうど移動中だったため、残念ながら、生で見ることができなかった。私はそれでも、何とか試合を見たいと、最寄の地下鉄駅でタクシーを降ろしてもらった。北京の地下鉄では大会期間中、ずっと街頭テレビが各所に置かれ、大会の様子を見ることができたのだ。 ちょうど中国代表の演技が始まっていた。長い足が見事に生えるスピン、天性の体が作り出す迫力はテレビでも伝わってきた。音声は聞こえないが、映像から、会場中が声援で後押ししていることは分かる。演技が終わって、井村コーチの姿が画面に映った。本当に優しい笑顔を浮かべながら、選手一人ひとりを抱きしめておられた。 結果は銅メダル。日本が初めてメダルを逃したこともあり、「中国が日本を押しのけてメダル」などという見方をする人もいる。 だが中国代表のコーチであるからには、もちろん日本にも負けたくないだろうが、ロシアにもスペインにも負けたくないのが当たり前だ。中国チームの全ての才能を引き出して、最高の成績に引き上げるのが彼女の仕事であり、「日中で火花」「裏切り行為」などと、ことさらに強調する一部の人は、何ともスケールが小さいものだと感じる。 試合後の井村さんのコメントを聞いて、「らしい」と感じた。彼女は、泣きじゃくる選手たちを横目に、まったく涙を流さなかったそうだ。そして「今はまだ涙を流すときではない。これは私にとって、驚きでも喜びでもなく、目標だったからだ」と語ったとのこと。 井村さんは中国代表の選手たちに12時間の猛烈なトレーニングを課した。食の細い選手たちに筋肉をつけさせようと無理やり食べさせた。選手たちに「日本流」の“あいさつ”の心を植え付け、スポーツ選手としての精神面を鍛えた。そして、大切な愛弟子を涙を飲んでメンバーから切り、故郷へ帰らせたこともあった。 全ては「メダル」という最高の喜びをもたらすためだった。 そして、それは、中国選手が天性に持つ有り余る才能を引き出し、豊かな身体能力を存分に生かして、最高の「結果」を出すためだった。 井村さんにとって、その対象となる選手は、日本人であろうが、中国人であろうが、また別の国であろうがどうでもいいのだろう。ただシンクロというスポーツを愛し、ひたむきに取り組む人たちであれば・・・。 指導者とはそういうものだろうし、井村さんはまさに、その指導者なのだと思う。そこから生まれた「結果」への反応は“驚き”でもなく、”感動“でもなく、一つの仕事をやり終えた「ほっと一息」なのだろう。 その“仕事”を見とどけた後、私は日本だ、中国だといっていることもばかばかしくなった。日本チームの演技も素晴らしかったが、確かに中国チームは本当に見ごたえある演技だった。良いものは良い・・・素晴らしいものには惜しみなく拍手を送ること・・・それが出来るからスポーツは素晴らしい。その当たり前のことを、国境を越えた挑戦をした井村さんの“仕事”をみて、改めて感じることができた。 31日は9月初めに、大きな任務を終えて、日本に帰国する井村ヘッドコーチを囲む送別会が行われた。私は残念ながら、所用で出席できなかったが、心から「感動をありがとうございました。そしてお疲れ様でした」といいたい。
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