← 歴史的アーカイブ一覧へ中国のプロサッカー、トップリーグCSL(中国超級リーグ)が3日開幕。今年は上海の2チームが合併し、チーム数が15チームに減少するという改編があり、開幕前から大きな話題を集めた。だが、より大きな注目が集まっているのは、そのCSLの下部リーグ、すなわち日本のJ2に当たる甲級リーグ(3月31日開幕)に今年初参戦する北京理工大学であろう。
そのほかのチーム全てがプロチームという環境の中、大学生と大学院生で構成する北京理工大学がどんな戦いぶりを見せるのか・・去年、下部リーグを破竹の勢いで戦い抜き、大学チームとしては初の甲リーグ入りを決めたときから、この開幕まで、中国サッカーファンの大きな話題となっていた。
北京理工大学サッカー部は2000年9月創部とまだ日は浅い。だが、これまでに3度、全国大学生サッカーリーグ優勝。2003年と2005年にはユニバーシアード大会に中国を代表して出場して7位とまずまずの成績を挙げた。そして2006年、乙級リーグ戦に出場し、見事、今季昇格を決めたというわけだ。
日本でも、現在、J2の下部にあたるJFL(アマチュア)に流通経済大学が参戦するなどしているが、さすがにプロリーグに参戦した大学チームはない。
北京理工大学は、文字通り、理系主体の大学である。毎日、練習は午後3時半から5時半まで。当然給料もないし、学業と練習の両立が要求される。関係者の話では、大学の試験も全て受けるし、他の学生と評点基準は同等。一切の特別措置はない。また仮に大学の勉強と練習や遠征などが重なる場合は、勉強のほうを優先させることが原則となっているそうだ。
北京理工大学サッカー部の金志楊監督は言う。「部員は他チームのプロ選手より身体能力は劣っている。また個人技術もまだまだである。だが、彼らの知識や資質は、他チームより上である。彼らの理解能力は試合中、監督の戦術意図を正確に汲み取ることができる。これが我々の成功の要因だ。」
一流アスリートになるには、「頭も大事」というのは我々の共通の認識であるし、だからこそ文武両道という言葉が生まれてくる。大学チームがプロに混じってリーグ戦を戦うというのは、確かにすごいことだが、日本で仮に同じことが起きても、ここまで大きな話題にはならないだろう。
だが、中国では事情が違う。それは、今年の中国スポーツが抱える二つの重大課題が、理工大学の甲リーグ入りに大きく関わっているからだ。
ひとつは、スポーツ選手の「資質」の問題。中国では、スポーツ選手に「文武両道」が要求されない。ただひたすら練習に励み、最終的に五輪でメダルを取れば、なんら文句が言われない。だが、“引退後”は別だ。場合によっては、社会に対する何の知識ももたず、いわゆる「スポーツ馬鹿」で、社会で生きるための技術をもたないため、引退後、社会から排除されてしまう例も生じている。そのためスポーツ選手の学力を含めた「資質」向上が今のスポーツ界の大きな課題となっている。
二つ目は「学校スポーツ」の普及である。今年、スポーツ界では、この「学校スポーツ」という言葉が、幾度となく現れる。
いうまでもなく、学校で行われるスポーツ活動である。日本は良かれ悪しかれ、部活動を中心とした学校スポーツが今もアスリート養成の中核を成している。近年、コミュニティ単位のクラブチームに中心におく「社会スポーツ」の概念が推進されつつあるが、やはり学校スポーツの意味合いは大である。
だが、中国は学校スポーツがいまだほとんど存在していないといってよい。「アスリート候補生」は児童段階から、すでに選別され、体育学校と呼ばれる専門学校に入学し、ひたすら五輪を目指す。
一方、そのほかの児童・生徒は、朝から晩まで勉強に終われ、日本のような部活動などというものは、ほとんどないといってよい。全ては「大学入試のため」という学校生活が小中高と続く。
彼らは確かにバスケットやサッカーを好むが、それはあくまで暇つぶしの遊びに過ぎない。日本のように、アマチュアでありながら、チャンピオンシップ主義が支配する世界とは全く異なるのである。
その改善のため、例えば、今学期から上海の小中学校では、授業開始時間を遅らせ、その分を「遊び時間」に当てるなどの改革が行われた。これについては、いつか触れたいと思うが、この「学校スポーツ」の象徴として、今回の北京理工大学は、政府にとって、恰好の宣伝材料というわけだ。
理工大学の甲リーグ入りが、ここまで大きく取り上げられるのは、後者の意味合いが強いと考えられる。確かに、今後、中国のスポーツが発展していくためには、現在の育成システムでは限界があり、より裾野を広げる努力が必要となる。その第一段階として、学校スポーツの充実は必須となるわけである。
これまで、一本道だった中国のアスリートの育成。だが、この理工大学の「成功」は中国スポーツの多元化を予感させる出来事といえそうだ。
HISTORICAL ARCHIVE / 2007-03
中国一学歴の高いチームがプロリーグ参戦
過去掲載記事をアーカイブから復元したものです。本文は当時の表記を維持しています。
出典・公開日時・復元状況
- 原掲載先
- スポーツナビ+/スポーツCHINA〜体育中国
- 筆者(原ページ署名)
- 朝倉浩之
- 当時の公開日時
- 2007/03/04 02:51(タイムゾーン表示なし)
- 公開日時の根拠
- ページ本文の日付・投稿時刻を確認。タイムゾーン表示なし
- 復元元URL
- http://www.plus-blog.sportsnavi.com:80/asa8043/article/46
- 保存日時(UTC)
- 2007-03-05T22:23:05Z
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