← 歴史的アーカイブ一覧へ世界各地で増え続ける“中華系”選手たち
先月24日から行われた世界卓球選手権の団体戦は、男女とも中国が圧倒的な強さを見せて、優勝を果たした。女子の若手NO1郭躍が決勝のシンガポール戦で不本意な試合を見せたほかは、男女とも安定した戦いぶりを見せ、さすが『卓球王国』を感じさせる内容となった。
さて、この大会期間中、国際卓球連盟は、今後の世界の卓球界の枠組みを変えるかもしれない大きな決定をした。卓球選手の『国籍変更制限』である。
今大会の女子決勝で、初の決勝進出を果たしたシンガポール。その最初の組み合わせが、郭躍(中国)とリー・ジアウェイ(シンガポール)のシングルスだった。リー・ジアウェイは中国・北京出身の27歳。中国のエース、張イネイ(26歳)とは年齢が1つ違いで、共に同じ体育学校で育った。1994年に北京代表となったが、その後は機会に恵まれず、結局96年にシンガポールへ渡り、同国の国籍を取得。以降、シンガポール代表の主力として、国際大会に出場している。(現在世界ランク8位)
実は各国には、今、このような『中国語を話す代表選手』があちこちにいる。そして、世界選手権などの国際大会では軒並み、彼らが上位進出し、準決勝、決勝レベルでは、ほとんどが彼らの間での対戦となっている。
今回の世界選手権でも、オランダやドイツの白人選手に混じり、中国人選手が主力として活躍した。全選手95人(中国大陸、香港、台湾)を除くのうち、元々中国国籍を有していたのは実に21人。試合後、彼らはCCTV中国中央テレビのカメラの前に引っ張り出され、中国語で試合を振り返っているのだが、当然のことながら、なんだか不思議な感じがする。今回、国際卓球連盟が下した決断は、これらの『国籍変更』について、制限を加えようというものである。
これら海外国籍を取得した“元”中国人選手のことを中国では「海外兵団」と呼ぶ。何だか、おっかない感じの名前だが、要は「海外ピンポン軍団」くらいの意味合いである。
世界卓球を“統治”する『海外兵団』
この『海外兵団』は、男女それぞれ世界ランク100位以内の選手のうち、なんと55人(男子21人、女子34人)に上る。このうち、最もランキングが高いのは、女子では6位に入っている遼寧省出身の王越古(シンガポール・27歳)。男子は10位の高寧(シンガポール・24歳)だ。
王越古は張イネイと同期で、未来を嘱望されたが、1997年の国内大会で右足をケガして手術を受け、国家代表の座を奪われて、再起を図るべく、日本に渡り、その後、シンガポールへ渡った。
高寧は国家代表の2軍から上がることができず、新天地を求めた選手。ちなみに、各国の選手の内訳を見ると、香港が最も多く11人(男子5人、女子6人)、続いてシンガポールが9人(男子2人、女子7人)、台湾2人とやはり中華圏が目立つ。
だが、それ以外にもスペイン、クロアチア、米国、イタリア、ノルウェイ、カナダ、ドミニカなど、とにかく幅広く、選手が散在していることが分かる。日本も五輪代表となった男子の韓陽を筆頭に吉田海偉、金沢咲希らがランキング100位内で頑張っている。こうなってくれば、ただでさえ、中国本土の選手が上位独占している状況だけに、国際大会の『内戦状態』は当たり前ということになる。
自前の“ヒーロー”作りに向けて
この状況に対して、異論を唱えたのが国際卓球連盟のアダム・シャララ会長(カナダ)らをはじめとする欧米の卓球関係者である。ある米国の関係者は「米国代表はほとんどが中国人。女子は全てが華人(米国籍の中国系)で米国生まれは一人だけ。これでは、米国本土の選手の成長機会が奪われてしまう」と現状を嘆く。
かつて卓球王国として君臨した欧州諸国の声も大きい。国際大会の対戦は、中国系選手がずらりと並び、顔ぶれはマンネリ気味。現在は、まだ高い人気を誇っているが、このままの状態が続けば、国内での卓球人気が将来にわたって続いていく保証はない。「やはり自前のヒーローが必要」というのは、欧州を中心に各国の一致した見方となっている。
では、このような「海外兵団」が生まれた背景はどこにあるのだろうか。
(続く)
'「国籍変更制限」の概要(2008年9月1日発効)
(1)21歳以上の選手が国籍を変更した場合、世界選手権やW杯には出場できない。
(2)15歳未満で国籍変更をした場合は3年間、15歳以上18歳未満は5年間、18歳以上21歳未満は7年間、世界選手権やW杯には出場できない。'
HISTORICAL ARCHIVE / 2008-03
中華“支配”からの脱却?~変わる世界の卓球地図(1)
過去掲載記事をアーカイブから復元したものです。本文は当時の表記を維持しています。
出典・公開日時・復元状況
- 原掲載先
- スポーツナビ+/スポーツCHINA〜体育中国
- 筆者(原ページ署名)
- 朝倉浩之
- 当時の公開日時
- 2008/03/09 20:27 GMT+9
- 公開日時の根拠
- dc:dateとページ内日付・投稿時刻を照合一致
- 復元元URL
- http://www.plus-blog.sportsnavi.com:80/asa8043/article/376
- 保存日時(UTC)
- 2008-03-14T00:08:08Z
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