
試合日程の混乱がもたらす課題
サッカーの試合は、チームの育成において非常に重要な役割を果たす。選手たちは試合を通じて自身の成長を確認し、試合後の振り返りや特定の課題に焦点を当てたトレーニングを行うことで、さらなる技術向上が期待できる。しかし、中国ではユース年代の大会が突発的に決定されることが多く、試合日程が重なる「試合のかぶり」や、直前の通知による「突発的な試合出場」が頻繁に発生していた。
これにより、チームは事前に戦略的な準備ができず、選手も万全なコンディションで試合に臨めないといった問題が生じていた。特に、同じ時期に複数の重要な大会が開催されると、どちらに参加すべきかの判断を余儀なくされ、試合スケジュールの管理が難しくなるのが現状であった。
「賽歴」とは? その導入と意義
こうした問題を解決するために、中国の国家体育総局、教育部、中国サッカー協会が連携し、2025年の「全国青少年サッカー競技日程(賽歴)」を正式に発表した。「賽歴」とは、全国の青少年サッカー大会の日程を統一的に管理し、一年を通じて体系的に試合を運営するためのスケジュール管理システムである。
これにより、青少年サッカーの指導者や関係者は、年初の段階で年間の大会予定を把握し、適切なトレーニング計画や参加戦略を立てることが可能となる。これは、青少年サッカーの発展にとって大きな転換点となるだろう。
日本で例えるなら、「全国高校サッカー選手権」や「インターハイ」、「ユースカップ」などの各種大会の日程が統一的に管理され、全国のクラブチームや学校チームが計画的にシーズンを戦えるような仕組みに近い。日本でも各地方サッカー協会が独自にスケジュールを決めることも多いため、チームによっては試合が集中したり、学業とのバランスが難しくなったりすることもあるが、「賽歴」はそれらの問題を解決するための取り組みだと言える。
「賽歴」がもたらす変化
北京体育大学の中国サッカー研究所所長である任定猛教授は、「賽歴」の導入は、中国サッカー改革の重要な一歩であり、ユース年代の試合運営をより体系的に統括するものだと評価している。
また、山東省サッカー管理センターの胡斌主任は、これまでユースの選手たちは、サッカーだけでなく学校の授業や学習とも両立しなければならず、そのバランスを取ることが大きな課題であったと指摘している。「賽歴」の導入により、学校のカリキュラムと試合のスケジュールを両立させる計画を立てやすくなり、学業とスポーツの両立がより現実的になる。
地域レベルでの成功事例
山東省は「賽歴」の導入を先駆けて試みた地域の一つであり、2024年にはすでに地域独自のユース年代の競技日程を発表していた。その結果、試合スケジュールが整理され、選手たちは適切な間隔で試合に出場できるようになり、競技レベルの向上が見られた。
従来のように試合が重なり、短期間で連戦を強いられる状況が減少したことで、選手たちは十分な休息を取りながら、試合後のフィードバックを生かしたトレーニングができるようになった。この成功事例を受け、全国規模での「賽歴」の導入が進められたのである。
今後の展望
「賽歴」の導入によって、中国のユースは「行き当たりばったり」から、より組織的かつ効率的な育成システムへと移行することが期待されている。特に、次の4つの点で大きな影響をもたらすと考えられる。
1. 試合日程の明確化
選手やチームが事前にスケジュールを把握し、計画的な準備が可能になる。
学業や家庭生活とのバランスが取りやすくなる。
2. 地域大会と全国大会の調整
地域ごとの大会スケジュールが全国大会と重複しないよう調整される。
これにより、選手がより高いレベルの大会に挑戦できる環境が整う。
3. 選手の負担軽減とパフォーマンス向上
連戦による疲労を防ぎ、選手が最大限のパフォーマンスを発揮できる環境を提供する。
4. 長期的な競技力向上
統一されたスケジュールのもとで、段階的な育成プログラムを実施できる。
これにより、将来的に世界レベルで活躍できる選手の育成につながる。
まとめ
「賽歴」の導入は、中国のサッカー界にとって画期的な改革といえる。これにより、突発的な試合スケジュールの混乱が減少し、選手たちはより計画的なトレーニングと試合に臨むことができる。
日本でも、スポーツと学業の両立が課題とされる中、「賽歴」のような統一的な試合日程の管理は参考にできる制度ではないだろうか。例えば、日本の高校サッカーやユースリーグでも、全国的なスケジュールの調整が進めば、より効率的な選手育成が可能になるかもしれない。
中国のこの試みが、今後どのように進化し、サッカーの競技力向上に寄与していくのか、引き続き注目していきたいところである。